第三回尾崎放哉賞 一般の部
尾崎放哉大賞
ネギ切る音がまっすぐな雨になる | 福岡県 | 井上 知子 |
春陽堂賞
古写真の中に整っている家族 | 埼玉県 | 黒瀬 文子 |
優秀賞
母も知らない母の骨を拾う | 北海道 | 十月十日 |
真摯丁寧誠実に美ら海を埋め | 北海道 | 鎌田 誠 |
病室の窓に並び初雪 | 兵庫県 | 深 放 |
春風強く吹く私は優しくない | 茨城県 | 野田 麻由可 |
あいつの通夜から帰った傘の雨切る | 東京都 | 本山 麓草 |
入賞
胸の穴を翅のない蝶がとおりぬけた | 静岡県 | 尾内 以太 |
断捨離を戦後の影が妨げる | 福岡県 | 増田 眞寿子 |
夕焼けを背に鍬を洗う | 宮崎県 | 小川 蝸牛子 |
明月が黙っているので私も黙っている | 大分県 | 徳永 純二 |
月を身ごもるクリムトを愛した夜 | 山口県 | 佐川 智英実 |
海がずっと街道沿いの夕陽の片側 | 福岡県 | 伊藤 夢山 |
物語ひとつ終らせてお茶にする | 福岡県 | 丹村 敦子 |
ひとひらちらす手話の生きろ | 東京都 | 岩渕 幸弘 |
麦わら帽で隠せる涙だった | 東京都 | 藤井 雪兎 |
世事にうとく暮らして渋柿をつるす | 大分県 | 折口 朋子 |
第三回尾崎放哉賞 高校生の部
最優秀賞
砂時計の中蜥蜴の鱗が落ちる | 秋田県立秋田北高等学校 | 熊谷 京香 |
優秀賞
屋上で先のわからぬ扉みつけた | 東京都市大学付属高等学校 | 込谷 和登 |
またねの三文字に全てをつめこむ | 早稲田大学本庄高等学院 | 鈴木 理央佳 |
受話器の向こうにある景色 | 愛知県立豊橋西高等学校 | 佐久間 光月 |
速まる時計の青春の日々 | 早稲田大学本庄高等学院 | 髙岡 昴 |
机の上で知らないくじらが死んでいるような世界 | 早稲田大学本庄高等学院 | 堀 和希 |
君の影と僕の影が重なる | 早稲田大学本庄高等学院 | 中村 謙太 |
駅前で選挙権を見極められる | 千葉県幕張総合高等学校 | 花澤 希海 |
右手を空の青に浸す | 愛知県立幸田高等学校 | 清水 直弥 |
一日の始まりと終わりは駅の改札。 | 岡山学芸館高等学校 | 板野 航太 |
放課後の教室に残された白い文字ひとつ | 早稲田大学本庄高等学院 | 田沼 歩莉 |
特別賞
笑顔咲く 一人ひとりが 向日葵の花 | 神戸市立神港橘高等学校 | 毛利 早那 |
クレヨンで描き潰したあの日の夕日 | 沖縄県立読谷高等学校 | 島本 琉風 |
窓を見ていたふりをする | 早稲田大学本庄高等学院 | 青山 紗矢香 |
夕暮れの横で待っている銀色の三日月 | 早稲田大学本庄高等学院 | 山本 芽依 |
階段を自転車でくだる新しい世界 | 早稲田大学本庄高等学院 | 長谷川 侑大 |
※以下の三句は、同一受賞者の作品。できるだけ多くの方に受賞の機会を持っていただく方針のため賞から外させていただきました。
おばあちゃんの笑い皺は迷路 | 熊谷 京香 | |
夜明けの海を溶かす水彩画 | 佐久間 光月 | |
世界の片隅に激しい夕焼 | 清水 直弥 |
【第三回尾崎放哉賞 選者】
自由律俳句結社『青穂』役員:- 小山 貴子
- 黒崎 溪水
- 佐瀬 広隆
- 吉多 紀彦
- 平山 礼子
- 高木 架京
- 平岡 久美子
- 埋田 貞子
- 三好 利幸